私たちの活動を支える考え方(旧)

「学ぶとは、人とかかわり合いながら賢さを育て続けること」これが私たちの基本的な
考え方、コンセプトです。このコンセプトは、認知科学や学習科学でこれまでわかって
きたさまざまな研究成果を集めてできあがってきたものでもあり、私たちがこの機構の
活動を通してこれからも育て続けて行くものでもあります。ここでは、学習科学、協調
学習、ジグソー法など、私たちの活動を支えている考え方を紹介していきます。

学習科学

学習科学は、認知科学を基盤として学習理論を構築し、理論に基づく実践的な検討を繰り返して、質の高い学習を導き出そうとする研究分野です。科学的概念変化や学習スキルそのものの獲得を重視します。

学校教育だけでなく、家庭や職場で起きる学びの解明も視野に入れ、これまでよりずっと長いスパンで学習研究を捉えます。同時に、学習の目標として、学んだ成果が

  • 学んだ場所を離れて「持ってゆける」こと(portability)
  • 必要になった時と場に合わせて適応的に「使える」こと(dependability)
  • 将来にわたって修正可能であることを含めて「長持ちする」こと(sustainability)

など、知識の質の向上を目指すところにも特徴があります。

こうした学びを実現するための有力な工夫の一つとして、「協調学習(collaborative learning)」と呼ばれる方法が広く実践的に検討されています。

ジグソー法

ジグソー法は、あるテーマについて複数の視点で書かれた資料をグループに分かれて読み、交換し、テーマ全体の理解を構築したり、テーマに関連する課題を解いたりするための活動です。

具体的には、まず同じ資料を読み合うグループを作り、その内容や意味合いを話し合い、資料を読んでいない他のグループの人たちにうまく説明する準備をします。

つぎに、違う資料を読んだ人を一人ずつ合わせて新しいグループを作り、担当した資料を互いに説明し合います。元の資料を知っているのは自分一人ですから、しっかり説明する必要があります。この活動が、自分の理解状況を内省したり、新たな疑問を持つ活動につながります。同時に他のメンバーから他の資料についての説明を聞き、自分が担当した資料との関連を考える中で、それぞれの資料についての理解を深めていきます。

各資料についての理解が進んできたら、それらをまとめて考えて与えられた課題への回答を作り、クラス全体で検討します。各メンバーがそれぞれ違う資料の視点からテーマ全体を協調的に吟味でき、ひとりひとりが自分なりに納得できる回答を導き出す過程が促進されます。

これらの一連の活動を繰り返すことで、将来必要な場面で使える知識や、未来の学びを準備する学習が成立することがわかっています。

CoREFと学習科学

CoREFは こうした学習科学の知見に基づいて、これまでに教育現場の先生向けの公開ワークショップを3回開催し、ジグソー法を応用した協調的な認知過程に関する理論を実感する学習体験を提供してきました。

また、教育現場からの要請にこたえて、指導主事や中学・高等学校の先生を対象とした出張ワークショップを3回開催し、協調的な学習体験を経て今後の授業案を検討する活動も行ってきました。これらの参加者を合計すると、延べ211名になります(2009年11月現在)。

私たちはこうした実践と研究を繰り返しながら、学習科学の知見を教育現場に還元すると同時に、先生方と一緒に「人はいかに学ぶか」についての理解を深め、現場で使える研究成果を上げていきたいと考えています。