学習科学

学習科学とは―学習研究の新たな視野―

学習科学は、認知科学を背景に、人が賢くなる仕組みを見つけ,その仕組みを使って人がほんとうに賢くなれるかどうかを確かめながら、科学的理解に基づいた質の高い実践を目指す科学です。「人はいかに学ぶか」についての理論を作り、その理論がどこまでほんとうか、理論をもとに実践してみて、その結果から理論を少しずつよりしっかりしたものにして次の実践につなぎます。例えば私たちは、人と一緒に問題を解くとひとりでは気づきそうになかったアイディアを急に思いついたりすることがありますが、その過程を詳しく検討してみるとそこにはちゃんとした仕組みが働いていることがわかります。学習科学はこういう一見些細な過程も丁寧に検討し、そこから見つかる「賢さの仕組み」をうまく使って質の高い学習を導き出して行きます。

学習科学は学校教育だけでなく、家庭や職場で起きる学びも研究の対象にしています。これまでよりもずっと詳しく、ずっと長いスパンで学習を研究し、「人が一生をかけてどこまで賢くなれるか」について理論を作ることを目指しています。

学習科学ではまた、学習者が日常生活の場で「使える知識」を身につけることが学習の目標だと考えます。
活用できる知識とは、

  • 学んだ場以外に持ち出せて(portable)
  • 必要な時に使え(dependable)
  • 作り変えつつ維持できる(sustainable)

な知識です。人は場面が違うとことば遣いも違ったりするように、問題の解き方も時と場合で違ってくるのが普通です。だから、必要な時に使えるためには、「同じ知識のさまざまな使い方」を検討しておいたり、一度学んだはずの知識を時々取りだして「磨い」たりする必要があります。こういう学習はこれまで学校教育ではあまり重視されて来ませんでしたが、社会や環境の変化が激しい21世紀には必要な学習だと考えられるようになって来ています。学習科学の研究例を読み物などで少しずつご紹介します。

『えるふ』:「わかる」を科学する

人の賢さについて考える時のヒントになりそうな認知科学研究を選んで、10回の連載で解説したものです。ちゅうでん教育振興財団 『えるふ』 「わかる」を科学する Vol.11-20 2005年7月~2007年10月に掲載したものです。
*ちゅうでん教育振興財団の承諾を得て掲載します。

『数学教室』:学習科学から

算数・数学や理科の授業を例に、人の学びの仕組みと人の学びをうまく支援するための方法について、12回にわたって考えてみたものです。数学教育協議会 『数学教室』 Vol.658-884に「学習科学から」と題して連載しました。掲載時期は2006年4月~2007年3月です。
*数学教育協議会の承諾を得て掲載します。

『Howdy!』

人の「できる」「わかる」「知っている」の仕組みについて、いろいろな事例を体験しながら考えられるよう、高校生向けに解説したものです。2003年中京大学入試センター発行の大学受験案内誌『Howdy!』 の内容を、フラッシュプレーヤーを使って実際に体験しながら考えられるようにしました。タイトルの「Howdy!」は「How do you do?」の略語です。
*中京大学の承諾を得て掲載します。